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| 店名 | カフェ・ド・ランブル (CAFE DE L’MBRE) |
|---|---|
| ジャンル | コーヒー専門店、喫茶店 |
| TEL |
03-3571-1551 ※お問い合わせの際は「"食べログ"を見た」とお伝えください。 |
| 住所 | 東京都中央区銀座8-10-15 |
| 営業時間 | [月~土] |
| 定休日 | 無休 |
| 設備・サービス | ランチ営業、日曜営業 |
| ホームページ | |
| 平均予算 |
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| 用途 |
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| 初投稿者 |
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今を遡(さかのぼ)る三十年(みそとせ)ばかり前のことゝかよ。世に純喫茶ばかり溢るゝに、「珈琲專門店」なる看板掲げし店、燎原に放たれた火の如くうち擴がりて遍(あまね)く東都に蔓延(はびこ)る。店の設(しつら)へ、焦げ茶の柱と白き壁の組み合はせにて、淹れ方、須(すべか)らく吸管式點前なり。
味より佇(たゝづ)まひに重きを置く「珈琲專門店」なるは瞬(またゝ)く間に廢(すた)れ、二十年(はたとせ)ばかり前よりはドトール珈琲の如き廉價店と茜屋珈琲店に代表される炭火焙煎高級店に分かる。その作法、何れも滴下式點前(てまへ)にて、吸管式點前悉(ことゞと)く地に塗(まみ)れたり。
數年ばかり前、俄(には)かに興りて忽(たちま)ち巷に蔓延(はび)こりしは、謂ふ所の「シアトル系」なり。電波媒體の根城に數店舖を構へ、錢拂はず喧傳せんと謀(はかりごと)爲しけり。狙ひ違(たが)はず、物見高き町人ども、競ひてスターバックスの暖簾を潛(くゞ)り、爭ひてこれを持て囃(はや)す。
二年(ふたとせ)ばかり前よりは、伊太利式茶店(ちやみせ)俄(には)かに興りて「シアトル系」を脅(おびや)かさんとす。今や、伊太利式點前(てまへ)を語らざれば粹人にあらずとの風あり。深く煎りたる珈琲豆を挽きて僅(わづ)かばかりの熱き湯を注ぎければ、泡(あぶく)、器の壁に纏(まと)はり附きける。
かゝる浮き沈み、現世(うつしよ)の定めなり。今を時めく伊太利式點前すら風の前に燈(とも)りたる火と異なるところなし。或は風に煽(あふ)られて木々に燃え移り、或は、忽(たちま)ちにして風に掻き消さる。世の浮き沈みを傍目(はため)に、昔ながらの遣(や)り方を只管(ひたすら)に守る老舖此處にあり。
一度(ひとたび)暖簾を潛(くゞ)るや、強き焙り香(いぶりか)部屋に充ち、わが鼻腔を穿(うが)つ。その香(かをり)、炭火にて煎りたる香とは聊(いさゝ)か異なりて、恰(あたか)も火事場の只中(たゞなか)に抛(はぶ)り込まれたるが如し。粗方(あらかた)噎(む)せんと欲するほどに、例に據(よ)りて、
・「イエメンモカ(モタリ)、中煎り」、値八百四十圓也。
熟々(つらつら)その點前(てまへ)を眺むるに、やおら玻璃製の瓶より取り出(ゐだ)したる珈琲豆を挽き、徐(おもむろ)に冷ました湯を注ぎ入れ、雫(しづく)滴(したゝ)るを待つ。その所作、恰(あたか)も客の顏を見たる後に山葵を卸す鮨店に似たり。是、佳(よ)き珈琲を愉(たの)しむ第一の條件なり。
一口又一口。味はふ程に特有なる強き酸味予(わが)舌を擽(くすぐ)る。碗を廻して静かに鼻を近づけるや、馥郁たる馨(かをり)、或は魚鱗、或は鶴翼となりて予(わが)嗅覺に迫る。僅(わづ)か五口(いつくち)餘(あまり)にて碗は空(から)。後味頗(すこぶ)る爽やかにて、春の叢(くさむら)に戲れる心地ぞしたりける。
數多(あまた)吟味・嚴選したる古き豆を煎りて玻璃の器に納め置き、客の頼みあらばその度(たび)に之を挽き、一碗の珈琲に點(た)てる。敢(あ)へて「珈琲道」と呼ばざる者なし。浮き沈み激しき斯界にありて動かざる位(くらゐ)を占めたる所以(ゆゑん)、蓋(けだ)し、かゝる愚直極まる點前・作法にあるべし。
歸り際入り口近くを眺むれば、齢(よはひ)九十になんなんとする主(あるじ)矍鑠(かくしやく)として豆煎るを見たり。數日前齢(よはひ)九十二の伯父、先月に齢九十四の伯母、去(いぬ)る年(とせ)には別の伯父齢九十七にて身罷(みまか)りければ、主(あるじ)の姿を瞼(まぶた)に燒き附け暇(いとま)を請ふ。