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上天丼 (\1,200)
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| 店名 | 天婦羅 うえじま (てんぷらうえじま) |
|---|---|
| ジャンル | 天ぷら、天丼・天重、居酒屋 |
| TEL |
03-3471-3860 |
| 住所 | 東京都品川区北品川1-21-2 |
| 営業時間 | 7:00~24:00 |
| 定休日 | 日曜日 |
| 設備・サービス | ランチ営業、夜10時以降入店可 |
| 平均予算 |
最も多くの方が実際に使った金額です。 →予算分布を見る [夜] ¥2,000 ~¥2,999 | [昼] ¥1,000 ~¥1,999 |
| 用途 |
多くの方がおすすめする用途です。 →用途分布を見る 友人・同僚と | 一人で |
| 初投稿者 |
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三浦屋、ロビンソンクルーソーカレーハウスなど、徒(いたづら)に巷(ちまた)の耳目を集めし店ありと云へど、一つとして取るに足るものなし。かくて北品川を過ぎ八つ山橋に至るに、この儘(まゝ)では面白からずとて舟溜(ふなだ)まりに向かふ。邊(あた)りには船宿(ふなやど)軒を連(つら)ね、さながら鄙(ひな)びた濱のごとし。
兵(つはもの)どもが夢の跡(あと)。品川ステンショ(驛)前の雲を衝(つ)く高樓を背に、舟溜(ふなだ)まりの屋形船を見下ろしつゝ古(いにしへ)を偲(しの)ぶ。ふと弓手(ゆんで)を見遣(や)ると、天麩羅うえじまなる看板ありて余(われ)を誘(いざな)ふ。この邊(あた)りでは三浦屋と竝(なら)ぶ名にし負ふ天麩羅の店。
熟々(つらつら)その門構へを眺(なが)むるに、そこらの一膳めしやと異なるところなく、暖簾を前に大いに躊躇(ためら)ふ。「入るべきや、入らざるべきや、そこが思案のしどころぞ」。最早俎板(まないた)の上の鯉。清水の舞臺から飛ぶ心地(こゝち)にて扉(とびら)を開く。中、紛(まぎ)れもなき一膳めし屋の設(しつら)へ。
品書きには、天麩羅のほか、一膳めし屋で目にする品が竝(なら)び、俄(には)かに奈落(ならく)の底に突き落されたる心地(こゝち)。天麩羅に少しの望(のぞみ)もあらざれど、流石(さすが)に生姜燒きの類(たぐひ)は話にならず、天丼の「竝(なみ)」と「上」の違(たが)ひを訊(たづ)ぬれば、穴子のあるなしの差とのこと。
・「上天丼」、一千三百圓也。
先づは玻璃(ビイドロ)の器(うつは)なる冷たき茶で喉(のみど)を潤(うるほ)すに、澁味なく色も鮮やか。訝(いぶ)りつゝその氏素性(うぢすじやう)を尋(たづ)ぬるに、テイバックと稱(とな)ふる紙袋入りの茶。厨房(だいどころ)の方(かた)を眺(なが)むれば、壁はうす汚れ、鍋には分厚い油糟(あぶらかす)がこびり附く。
その油糟(あぶらかす)、百年(もゝとせ)千年(ちとせ)の塵芥(ちりあくた)が凝(こ)りて固まりたるごとく、色、天竺(てんじく)に棲(す)める烏(からす)よりもなほ黒し。齢(よはひ)八十(やそぢ)を超えたと思(おぼ)しき老婆(をみな)、この油鍋の前に張り附きて續けざまに天種を抛(はふ)り込む。待つこと暫(しば)し。
やがて運ばれ來たりし上天丼。その内譯、穴子、冷凍蝦、女鯒(めごち)に加はるは、間引き玉蜀黍(もろこしきび)、椎茸、獅子唐辛子。穴子は噂に違(たが)はず丼(どんぶり)に餘るも、穴子としては「めそ」の大きさ。丼汁(どんつゆ)は上から垂らし掛ける遣(や)り方にて、掛ゝりたるところと地の色が斑(まだら)をなす。
先づは、蝦を丼の蓋(ふた)に移す。南蠻の泥に塗(まみ)れし蝦喰らふは末代までの恥。御先祖樣にも申し開きが立たぬ。熟々(つらつら)斑(まだら)模樣の穴子の姿を眺(なが)むるに、風にそよぎて右に棚引き、手に震えて左に飜(ひるがへ)る。名のある店の穴子なれば、箸の一太刀で上と下とが泣き別れとなる筈(はづ)。
その揚げ方、一膳めし屋の天麩羅とつゆ異なるところなく、色も香(かをり)も今二つ。徐(おもむろ)に丼汁(どんつゆ)の掛ゝりたるところを一口するに、あまりの甘さに言葉を失ふ。味醂由來と云ふよりおそらくは砂糖の甘さ。本朝で、砂糖の、惣菜から名のある店の懐石(會席)に至るまで濫(みだり)に用ゐらるゝは目に餘る。
穴子そのものは思ひのほかに臭みなく、時季の所爲(せゐ)かなかなかの味はひ。女鯒(めごち)はあまりに小さく、そのほかも取るに足るものなし。次いで恐る恐る南蠻渡來(わたり)の蝦を一齧り。活けの車蝦には及ばぬものゝ、仄(ほの)かなる甘みがあり、瑞々(みづみづ)しさを保つ。これに魂消(たまげ)てまた一口。
訝(いぶか)りつ、首を捻(ひね)りてまた一口。舌觸(したざは)りの滑(なめ)らかなること、本朝に比(くら)ぶるものなく、たゞ、唐土(もろこし)で腕の立つ厨師の手にかゝりたる蝦を知るのみ。歸り際(ぎは)に見た蝦は、そこらそんじよで賣られてゐる品。殘すつもりが、二口・三口と重ね、やがて粗方(あらかた)胃の腑に消ゆ。
丼の飯(いひ)は粒が立ち、僅(わづ)かに殘る塊(かたまり)も箸で突くや脆(もろ)くも崩れ落つ。これを摘(つま)みて口に抛(はふ)り込むや、忽(たちま)ち解(ほど)け、暫(しば)し奧齒に幾粒か留(とゞ)まりたる後(のち)、喉(のみど)を過(す)ぐる。淺蜊の未醤汁と香の物(青菜の芥子漬け)は少しもよろしからず。
押しなべて、味のみならず店の設(しつら)へも三浦屋竝(なみ)。廣さは天麩羅うえじまが勝り、色紙の數は三浦屋が上廻る。何の故(ゆゑ)にかくのごとく持て囃(はや)されるか、その譯(わけ)を知らされど、巷(ちまた)に連鎖店ばかり蔓延(はびこ)るは見るに忍ひず。たゞ、この店の商(あきな)ひ永く榮えるを祈るのみ。