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ランチコース (\8,400)
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子羊のパイ包み焼き マリアカラス 、 舌平目のブレゼ アルベール風 、 温泉卵にトリュフピューレ
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フレンチはソースが命と言われる時に代名詞として上がってくる店。キュイジーヌでは無く、胃にズッシリと来る正統派。訪問前に聞いていたこれらの評判から、ソースで食べさせるフレンチを想像していた。
実際に料理を頂いた感想は、ソースで食べさせるフレンチとソースも旨いフレンチ、胃にズッシリと来ると胃も満足させる、この2つはそれぞれ全くの別物だと言う事。この店の料理は、ソースも旨いフレンチで舌だけで無く胃も満足させる物だった。
美味しいソースと一緒に頂く料理では無く、野菜、甲殻類、魚、肉と言った素材の味わいが存分に楽しめる料理で、それぞれの料理にピッタリとあったソースが更に旨みを追加している。ドッシリと腰が座った料理は食べ応え充分だが、ボリューム満点な訳では無い。適量でしっかりと胃を満足させてくれる。食べ終えた時には満腹でもう食べられないと言った感じなのだが、1時間もすれば落ち着き胃もたれする事もない。
内装は過度に豪奢では無いが、木材が多く使用された落ち着いた空間で、シュチュエーション重視の方もガッカリさせないと言った所。会話のじゃまにならない程度の静かな音楽も流れており、フレンチを頂くのにはピッタリの雰囲気だ。床も椅子も木製のため、椅子やテーブルを動かす時に音がするのがやや難点か。スーペスは外から見たイメージよりも広く席数も多い。60人程度は入れるのではないだろうか。テーブルの間隔は丁度良く、隣の会話が聞こえて来る事は無い。
サービス陣は場数を踏んでいる印象。一言二言の会話で上手く間合いを計り、客をリラックスさせて行く。常に笑顔を絶やさず話しかけ安い雰囲気も演出している。このサービス陣とメニューのオーダーを含むやり取りをして、最後まで緊張したまま帰途に付く客は滅多にいないのでは無いだろうか。料理の説明にも淀みが無く、サーヴも非常にテンポがいい。満席時でも各テーブルの様子をしっかりと把握しており、そつなく仕事をこなしていく。サービス陣の安定感は東京のレストランでもトップクラスだ。
ランチはコースが4種類。ポタージュ、魚、又肉のコースが3,780円(以下税込み サービス料10%別)。前菜、魚又は肉のコースが4,830円。前菜、ポタージュ、魚又肉のコースが6,300円。料理は3コース共通で、前菜は3種類、魚と肉は2種類の中からチョイス出来る。他にスペシャリテが並ぶ、前菜、魚、肉料理の8,400円のコースもある。こちらは魚料理が3種類、肉が2種類の中からチョイス出来る。全てのコースにデザートワゴンとカフェが付いてくる。ア・ラ・カルトは豊富で、コース料理との差し替えも可能だが追加料金がかかる。ガス無しのミネラルウォーターはエビアン1㍑で840円。
スペシャリテの並ぶ8,400円のコースをオーダー。相方は6,300円のコースを選択。コースの内容は以下の通り。写真は相方のオーダーした料理も掲載。
パリのマキシム・ド・パリで有名なソプラノ歌手マリア・カラスに捧げるために考案された料理の改良版、○仔羊のパイ包み焼き マリアカラス は30年来スペシャリテと言う事で是非とも味わって見たかった。ランチコースの選択肢には含まれていなかったため、相方共々メイン料理を差し替えて貰った。
○フルーツトマトのガズパチョ
アミューズはフルーツトマトのガスパチョ。フルーツトマトと言う事で、自然な甘味強いのスープを想像していたが、普通のトマトのガズパチョに近い味わいで適度に酸味が利いてる。夏場にアミューズとして登場しそうなサッパリとした飲みやすいスープ。
○オマール海老のガトー仕立て
スペシャリテの一つ。オマール海老とモリーユ茸、インゲン、人参、パプリカ、ズッキーニ等をキャベツで巻いたテリーヌ。付け合わせはタラバガニの身をほぐした物。ウニと甘味の強い貴腐ワインソーテルヌのソース、トマトのソース、マッシュルームのソースの3種類のソースと共に頂く。オマール海老、モリーユ茸、数種類の野菜のどれもしっかりと素材の味わいと食感を楽しむ事が出来る。素材のみの味の組合せで、ソースをつけずにそのまま食べても美味い。3種類のソースはどれも自己主張し過ぎておらず、テリーヌと一緒になった時に初めて真価を発揮するといった印象。特にウニとソーテルヌのソースは面白かった。そのままだと適度に甘い感じのソースで、ウニの風味はあまり感じられない。がオマール海老やタラバガニと一緒に頂くと「ああ ウニで作ったソースだな」としっかりと風味を感じる事が出来る。相方のオーダーした2種類のテリーヌ盛り合わせにも同じソースが添えられており、帆立のテリーヌと一緒に頂くとしっかりとウニの風味が感じられる、とまったく同じ感想だった。海鮮類のテリーヌに併せたソース。前菜からソースの奥深さを堪能させて貰った。
○スズキのパジリコ風味
スペシャリテの一つ。スズキ自体はシンプルにオリーブオイルで焼かれており、上にはセロリラブ、ポロ葱、人参を炒めた物が乗せられている。ソースはベルノー酒と魚の2番ダシから作ったソース。ソースはスープ仕立ての様にたっぷりとある。この単純明快な料理が凄まじく美味い。シンプルに焼かれたスズキは、淡泊な白身魚その物と言った味わい。野菜への火入れが素晴らしく、食感、味共に文句なし。それぞれの野菜の自然な甘味が生きており、シャキシャキとした気持ちの良い歯ごたえ。この野菜が恐ろしくスズキとマッチしている。ベルノー酒から作られた甘酸っぱいソースも絶品。味付けの濃さも丁度良く、魚の旨味も利いている。スープの様に飲めるソースで、そのまま飲んでもかなり美味い。これをスズキや野菜に合わせると、もう一回り豊かな味わいになる。今まで味わった中でも5本の指に入る程に美味い魚料理だ。
○仔羊のパイ包み焼き マリアカラス(+3,000円)
脂を取り除いた仔羊の背肉に、フォグラとトリュフを詰めてパイ皮で包んで焼いた料理。ソースはアレンジ版のペリグーソース。付け合わせはポテトのガレットと根セロリのピューレ。仔羊はロゼ色の断面で、熱でとろけたフォグラと相まって見るからに旨そう。クセの無い味わいでナイフを入れた時の弾力も丁度良い。フォアグラとトリュフがパンチ力とコクを補っている。パイ皮もサクサクっと焼かれており、これにソースを染みこませて頂く。濃厚で甘い味わいのソースと併せると美味さが倍増する。ドッシリと腰を据えた感じのペリグーソースは食べ応えも加えている。あまったソースをパンに付けて頂くのもこの料理の楽しみの一つだ。このソースだけでパンが1~2個ペロリといけてしまう。
あまりの美味さにソースについて尋ねた所、「え!いいの?」とこちらが驚いてしまう程、丁寧に教えて頂いた。実際はもっと複雑な工程を踏んでいるのだが、素人に理解できたの以下の通り。記憶が違っている部分も多々あると思われる。
①エシャロットをみじん切りにしてよく炒め、12種類のワインとフォンドヴォー、仔羊の出汁を加えて煮詰めて行く。
②1/3程度になるまで煮詰めた後、先ほどの12種類のワインを加えて味を調整し良く漉す。
③トリュフ、トリュフジュース、風味付けと色あいの調整にポート酒を加えてまた煮詰める。ペリグーソースには本来はマゼラ酒を用いるそうだが、それだと色が茶色掛かった赤色になってしまうため、より綺麗な赤色を出すためにポート酒を使っているとの事。
④仕上げにポート酒を加えて色合いと風味を調整し、トリュフを散らす
こんなに手の込んだソースがまずかろうはずがない。説明を聞いている間の当方は感心しっぱなしであった。味わい、食べ応え共に、これほどメインと呼ぶのに相応しい料理は久しぶりに頂いた。
最後はデザートワゴン。相方と二人で全種類お取りしましょうかと薦められるが、まだお腹に余裕があったので一人で全種類頂いた。
ブルベリーと木苺のケーキ、シブスト、イチジクの入ったチーズケーキ、コーヒー風味のチョコレートケーキ、シュー生地のバナナケーキ、フルーツのスープ仕立ての6種類。ケーキはどれもしっかりとした甘さがあり、フルーツのスープ仕立てはサッパリと頂ける。ワゴンのデザートにしては中々の味わいで、コースの締めとしても充分満足できる。がこれぞという一品がないのも確か。それまでの料理が素晴らしいだけにデゼールはやや弱く感じられる。
コースはそれぞれの役割が非常にハッキリとしている。軽さを意識していないとは言っても前菜からドカンと来る料理が登場する訳では無い。サッパリと食べやすく食欲が沸いてくる前菜、その一皿で充分に満足出来るが、肉料理も食べる余裕が残る魚料理、これぞ主役と言った感じの肉料理。そこからは気持ち良いくらいに王道のど真ん中を突っ走る物語が見えてくる。
エンディングのみがやや残念。ワゴンサービスのデセールは様々な種類を楽しむ事が出来、甘さもボリュームも充分に満足の行く物だった。が、このシェフが考える物語の結末を、一皿のデザートで味わって見たかった。
この店を気に入るかどうかは、クラシックフレンチが好きか?この1点に掛かってくると思われる。軽い味わいのモダンフレンチがお気に入りの方にはお薦めできない。個人的にはクラッシックな正統派の中でも1.2位を争う美味さで大満足だった。サービス陣を含めたレストランとしての総合力も極めて高い。次回もまた訪問したくなるレストランの一つだ。